『ライトインザピアッツァ』千秋楽感想 代打ながらいい仕事した気分
それは12月13日のお昼前のことでした。
部門は違うけれど同じフロアの先輩からメールが入りました。
※聞かれなくても書きますが、勤務時間中のことです
内容は「『ライトインザピアッツア』千秋楽(16日)、行けなくなったのでチケット救って!」(要約)。
席番を元に座席位置を確認したらやや後ろながらほぼセンター、前方のサイド席より後方や2階のセンター席が好きな私には願ってもないところ。
※聞かれなくても書きますが、(以下略)。
これでチケット代11,000円かあ。…高いのか安いのか。
でも役者は豪華なんだなあ。島田歌穂さんに新妻さん、綜馬さんにシルビア。…うーん、小西くんは歌がちょっと不安だなあ。…うわっ、大高さんが出るの?このメンバーの中に?…とパソコンの前で真面目な顔しながら一人悩む。
※聞かれなくても(以下略)。
とどめは「演出:G2」、…どんなミュージカルだよ、おい。
次の日、私の手元にはチケットが。
今にして思えばなぜ日曜日に何も予定を入れていなかったのやら。
役者どころか演出家で観に行こうと思えるのも、守備範囲が広がったおかげでしょう。
今回の感想は役者もさることながら、演出の感想から始めたいと思います。
G2さんは去年の『魔界転生』の演出をされていたことにより初めて名前を知りました。
なにせ「原作は山田風太郎」、「場所は新橋演舞場」、「役者の出身は正に異種格闘技」と言う、傍目に観ても破綻をきたしそうなカンパニーだったのに、ものの見事に説得力のある舞台にまとめあげていたのが凄かった。
そして『ライトインザピアッツァ』はどうだったかと言うと。
事前に「難しい曲ばかりで、1回聴いただけでは覚えられない」と聞いていたが、…ホントに覚えられなかった。
でも話の流れは台詞を普通に聴いているだけですんなり頭に入ってくる。
ミュージカルと言うよりは、台詞で表現するところを歌で表現している…と書けばおわかり頂けるでしょうか。
確かに曲は覚えられなかったが、話自体は1回で理解できた。
テーマ自体はヘビー級、だと思う。
ネタバレしない程度に書くと、夫子ども(特に女の子)のいる女性なら身震いするのではないだろうか…と言う内容。
独身の私ですら、子どもを産んで自立するまで育てることは一大事業であることを、このミュージカルでまざまざと実感しました。
それを思うと両親に感謝です。今更ながら。
役者の感想まいります。
なんと言っても島田歌穂さんのマーガレット。
こちらでの歌穂さんの役は、いわば娘に負い目を感じている役。
私が前述の真面目な感想を持つに至ったのは、ひとえにマーガレットに感情移入できたから、…もしくは感情移入したくなる人間だったから。
台詞回しや間合いの絶妙さはもちろんだったが、母であり女であり…と言った多面性が自然に顔をのぞかせるのがすごい。実にチャーミングな人だ。
シニョール・ナッカレリがチュウしちゃうのも道理…、おっとネタばれ失礼。
マーガレットの娘、クララは新妻さん。最初何歳ぐらいなんだろうと思ってました。
マーガレットがクララに近づく男の子を必死で遠ざける、みたいことを冒頭でしゃべっていたし、仕草や外見に幼さを残していたので18か19歳ぐらいかなあ…と。
そしたら「肉体は26歳、精神は12歳」だって言うじゃありませんか。
…その意味で言えば新妻クララはグッジョブだと思います。
そのくせクララの曲は素人が聴いても難しい曲ばかり、いつもの爆音聖子ちゃんとは一味違う歌い方が新鮮でした。
でも個人的には、今回の新妻さんは歌よりも演技の方が印象に残っています。
マルグリットやエポニーヌは歌の方に力を注ぎすぎた感があったけど、こんな風に風情雰囲気で見せられると言うことは、役作りをしっかりやった証とも言えるでしょう。
このカンパニーの中で、一番いいタイミングでこの作品とG2さんに出逢えた人だと思います。
クララと恋に落ちる青年、ファブリーツィオの小西さん。
「全然ダメ!」と言うワケではないのだけど、『レ・ミゼラブル』では同じ役の他3人の方々がべらぼうに歌がうまかったため、私の中では「イケメンだけど歌がんばれ!」と言うイメージがしみついてしまった小西さん(長いよ!)。
実際舞台に立つ彼は、本当に舞台映えがしていい男なんだよなあ。
それと彼も歌よりは、イタリア人にあるまじき(と言うのは失礼?)純情さが、なんかいい。
歌は…間違いなくレミゼのナンバーより難しいが、よくやったと思いますよ。ただ、ここでも他のメンバーが歌える人ばかりなのが、小西さんの不運かと…。
大変な余談ですが、一幕目冒頭でファブリーツィオが「クララ」を連呼するナンバーを聴いて、『ウエストサイド物語』の「マリア」みたい…と思ったのは私だけでしょうか。
シルビアと大高さんが夫婦…という設定もすごい。と言うか、想像つかなかった。
と言うのは私は学生時代に第三舞台を観ていたため、その主要メンバーの大高さんが商業演劇に出ることなど想像もしていなかったから。
…いや、筧さんが『ミス・サイゴン』に出ていることを知った時の方が衝撃が激しかったかな?
それはともかく大高さん演ずるジュゼッペ・ナッカレリ、今思い返してみると全編とおして日本語をしゃべっていなかった。しかもプログラムのキャストページの質問もイタリア語で答えていた…。
『ライトインザピアッツァ』のブログで、ジュゼッペだけ他の人と違うことをやるとあったのだけど、もしかしてこのことかなあ?
大変な余談その2。大高さんが出てきた瞬間、私は「ああ、あのジャケットの着こなしと肩のラインは…」と、シルエットだけでわかってしまいました。
第三舞台をご覧になったことがある方は頷いていただけることと存じます。
そしてこの方を抜きにして終わりにはできないでしょう。
シニョール・ナッカレリ、鈴木綜馬さん。
公式サイトではヒゲなしの無駄に爽やかなシニョールだったが、実際は口ヒゲ顎ヒゲの似合う「いつもの」ダンディおやじ綜馬さんでございました。
しかも直にイタリア人に接したことのない私でも、「誰よりもイタリア人らしい!」と思ってしまったほど。
それにあんなに女性をエスコートする姿が様になる日本人も、そうそういないでしょうねえ。仕草や身のこなしもスマートだし。
ああ、綜馬さんのビースト観たかった!トニー観たかった!ファントム観たかった!
…言っても無駄だとわかっちゃいますが、言わずにはいられません。
それにしても。
大高さんと小西さんが兄弟で、綜馬さんがその父親というだけでもなかなか信じがたい家族構成なのに、それでナッカレリ夫人は寿ひずるさんと来た日にゃあ…。
ナッカレリ家一同が揃ったところの一体感たるや、この4人は間違いなく家族だ!と思わざるを得ませんでした。
これだけ単独で客を呼べそうな役者が集まっているにも関わらず、あくまで話優先(すなわちオリジナルどおり?)の脚本演出がなされたこと、そして演出家の方針にまんまとのったと見せかけて実は楽しんでいた役者に拍手。
ミュージカルと言えど演劇の一ジャンルだと痛感しました。
11,000円という金額はそれを考えると決して高くはありませんでした。
是非再演希望、その暁には自分できちんとチケットを手配しようと思っています。
部門は違うけれど同じフロアの先輩からメールが入りました。
※聞かれなくても書きますが、勤務時間中のことです
内容は「『ライトインザピアッツア』千秋楽(16日)、行けなくなったのでチケット救って!」(要約)。
席番を元に座席位置を確認したらやや後ろながらほぼセンター、前方のサイド席より後方や2階のセンター席が好きな私には願ってもないところ。
※聞かれなくても書きますが、(以下略)。
これでチケット代11,000円かあ。…高いのか安いのか。
でも役者は豪華なんだなあ。島田歌穂さんに新妻さん、綜馬さんにシルビア。…うーん、小西くんは歌がちょっと不安だなあ。…うわっ、大高さんが出るの?このメンバーの中に?…とパソコンの前で真面目な顔しながら一人悩む。
※聞かれなくても(以下略)。
とどめは「演出:G2」、…どんなミュージカルだよ、おい。
次の日、私の手元にはチケットが。
今にして思えばなぜ日曜日に何も予定を入れていなかったのやら。
役者どころか演出家で観に行こうと思えるのも、守備範囲が広がったおかげでしょう。
今回の感想は役者もさることながら、演出の感想から始めたいと思います。
G2さんは去年の『魔界転生』の演出をされていたことにより初めて名前を知りました。
なにせ「原作は山田風太郎」、「場所は新橋演舞場」、「役者の出身は正に異種格闘技」と言う、傍目に観ても破綻をきたしそうなカンパニーだったのに、ものの見事に説得力のある舞台にまとめあげていたのが凄かった。
そして『ライトインザピアッツァ』はどうだったかと言うと。
事前に「難しい曲ばかりで、1回聴いただけでは覚えられない」と聞いていたが、…ホントに覚えられなかった。
でも話の流れは台詞を普通に聴いているだけですんなり頭に入ってくる。
ミュージカルと言うよりは、台詞で表現するところを歌で表現している…と書けばおわかり頂けるでしょうか。
確かに曲は覚えられなかったが、話自体は1回で理解できた。
テーマ自体はヘビー級、だと思う。
ネタバレしない程度に書くと、夫子ども(特に女の子)のいる女性なら身震いするのではないだろうか…と言う内容。
独身の私ですら、子どもを産んで自立するまで育てることは一大事業であることを、このミュージカルでまざまざと実感しました。
それを思うと両親に感謝です。今更ながら。
役者の感想まいります。
なんと言っても島田歌穂さんのマーガレット。
こちらでの歌穂さんの役は、いわば娘に負い目を感じている役。
私が前述の真面目な感想を持つに至ったのは、ひとえにマーガレットに感情移入できたから、…もしくは感情移入したくなる人間だったから。
台詞回しや間合いの絶妙さはもちろんだったが、母であり女であり…と言った多面性が自然に顔をのぞかせるのがすごい。実にチャーミングな人だ。
シニョール・ナッカレリがチュウしちゃうのも道理…、おっとネタばれ失礼。
マーガレットの娘、クララは新妻さん。最初何歳ぐらいなんだろうと思ってました。
マーガレットがクララに近づく男の子を必死で遠ざける、みたいことを冒頭でしゃべっていたし、仕草や外見に幼さを残していたので18か19歳ぐらいかなあ…と。
そしたら「肉体は26歳、精神は12歳」だって言うじゃありませんか。
…その意味で言えば新妻クララはグッジョブだと思います。
そのくせクララの曲は素人が聴いても難しい曲ばかり、いつもの爆音聖子ちゃんとは一味違う歌い方が新鮮でした。
でも個人的には、今回の新妻さんは歌よりも演技の方が印象に残っています。
マルグリットやエポニーヌは歌の方に力を注ぎすぎた感があったけど、こんな風に風情雰囲気で見せられると言うことは、役作りをしっかりやった証とも言えるでしょう。
このカンパニーの中で、一番いいタイミングでこの作品とG2さんに出逢えた人だと思います。
クララと恋に落ちる青年、ファブリーツィオの小西さん。
「全然ダメ!」と言うワケではないのだけど、『レ・ミゼラブル』では同じ役の他3人の方々がべらぼうに歌がうまかったため、私の中では「イケメンだけど歌がんばれ!」と言うイメージがしみついてしまった小西さん(長いよ!)。
実際舞台に立つ彼は、本当に舞台映えがしていい男なんだよなあ。
それと彼も歌よりは、イタリア人にあるまじき(と言うのは失礼?)純情さが、なんかいい。
歌は…間違いなくレミゼのナンバーより難しいが、よくやったと思いますよ。ただ、ここでも他のメンバーが歌える人ばかりなのが、小西さんの不運かと…。
大変な余談ですが、一幕目冒頭でファブリーツィオが「クララ」を連呼するナンバーを聴いて、『ウエストサイド物語』の「マリア」みたい…と思ったのは私だけでしょうか。
シルビアと大高さんが夫婦…という設定もすごい。と言うか、想像つかなかった。
と言うのは私は学生時代に第三舞台を観ていたため、その主要メンバーの大高さんが商業演劇に出ることなど想像もしていなかったから。
…いや、筧さんが『ミス・サイゴン』に出ていることを知った時の方が衝撃が激しかったかな?
それはともかく大高さん演ずるジュゼッペ・ナッカレリ、今思い返してみると全編とおして日本語をしゃべっていなかった。しかもプログラムのキャストページの質問もイタリア語で答えていた…。
『ライトインザピアッツァ』のブログで、ジュゼッペだけ他の人と違うことをやるとあったのだけど、もしかしてこのことかなあ?
大変な余談その2。大高さんが出てきた瞬間、私は「ああ、あのジャケットの着こなしと肩のラインは…」と、シルエットだけでわかってしまいました。
第三舞台をご覧になったことがある方は頷いていただけることと存じます。
そしてこの方を抜きにして終わりにはできないでしょう。
シニョール・ナッカレリ、鈴木綜馬さん。
公式サイトではヒゲなしの無駄に爽やかなシニョールだったが、実際は口ヒゲ顎ヒゲの似合う「いつもの」ダンディ
しかも直にイタリア人に接したことのない私でも、「誰よりもイタリア人らしい!」と思ってしまったほど。
それにあんなに女性をエスコートする姿が様になる日本人も、そうそういないでしょうねえ。仕草や身のこなしもスマートだし。
ああ、綜馬さんのビースト観たかった!トニー観たかった!ファントム観たかった!
…言っても無駄だとわかっちゃいますが、言わずにはいられません。
それにしても。
大高さんと小西さんが兄弟で、綜馬さんがその父親というだけでもなかなか信じがたい家族構成なのに、それでナッカレリ夫人は寿ひずるさんと来た日にゃあ…。
ナッカレリ家一同が揃ったところの一体感たるや、この4人は間違いなく家族だ!と思わざるを得ませんでした。
これだけ単独で客を呼べそうな役者が集まっているにも関わらず、あくまで話優先(すなわちオリジナルどおり?)の脚本演出がなされたこと、そして演出家の方針にまんまとのったと見せかけて実は楽しんでいた役者に拍手。
ミュージカルと言えど演劇の一ジャンルだと痛感しました。
11,000円という金額はそれを考えると決して高くはありませんでした。
是非再演希望、その暁には自分できちんとチケットを手配しようと思っています。
by piramasa
| 2007-12-28 00:10
| 芝居感想