4月6日『ラ・マンチャの男』感想 懐かしくもあり懐かしくもなし
左側:『ラ・マンチャの男』今回公演のプログラム
右側:『ラ・マンチャの男』1995年青山劇場公演のプログラム
私が初めて『ラ・マンチャの男』を観たのは13年前、青山劇場の公演だった。
当時はミュージカルを観始めて間もない頃だったが、最後の「見果てぬ夢」リプライズで文字どおり号泣したほど感動したことを、昨日のことのように思い出せる。
そして今日、実に13年ぶりの観劇とあいなりました。
まず小屋が違います。
個人的には『ラ・マンチャの男』は帝劇より日生向きのミュージカルだと思ったのですが、実際観てみたら、やっぱり帝劇では規模が大きすぎるかな…。
席も3階席だったのが、1階後方(要するにA席)を迷うことなく取りました。
1階後方は割と良かったです。特定の役者のファンでなければ、セットが大掛かりなので後ろか2階席で観ることをお勧めします。
そして役者。
13年も経てば当然入れ替わりもありますが、13年前はアントニアだった松たか子が今回はアルドンサとはねえ…。
初見の時に観た鳳蘭さんのアルドンサがとにかく強烈だったので、さあ彼女はどうかな…と期待と不安半々で帝劇に向かいました。
ちなみに。
『ラ・マンチャの男』は休憩なしで上演時間は2時間ちょっとです。
オケピが舞台両袖なのは変わらずでした。
チューニングの中にギターの音が混じっているのが、雰囲気があっていいです。
それにしても『ラ・マンチャの男』のマエストロは塩田さん、オケピがこの配置じゃあねえ(笑)。
…と思ったらのっけからとんでもないパフォーマンスがありました。
客電が消えたと思ったら、突如舞台真ん中にピンスポを浴びる塩田さんが!
そのまんまオーヴァーチュアの代わりに「ラ・マンチャの男」「見果てぬ夢」を演奏するオケ、と、気持ちよさそうにタクトを振る塩田さん。
…前からあんな演出?だったっけなあ?
ミュージカルヲタの方々は大ウケだったことと思われますが、普段は歌舞伎を見慣れているおじさまおばさま方は、誤解しやしないかと心配でなりません(半分うそ)。
さて本編の感想まいります。
誤解を恐れずに書くと、「話を見る」「歌詞や言葉を楽しむ」「役者のテクニックや存在感を楽しむ」つもりで行くのが、このミュージカルもしくはカンパニーを楽しむコツかと思います。
『ラ・マンチャの男』自体、話やキャラクターで見るミュージカルだと思います。
が、ここ数年急激にミュージカルを観る回数が増えた功罪とも言いましょうか。
皆さんもちろん下手じゃないんだけど、なんだかパンチ不足に感じました…。
それは声量不足だったり、声質が役とマッチしていなかったり、声はいいのにピッチが危なっかしかったり…。
逆にミュージカルを観たなあ!と思えたのは、神父の石鍋さんと家政婦の荒井さん、床屋の駒田さん。
ことに終盤、聖歌を歌う石鍋神父さんの声には泣きました。
次回観たら、もっと泣いていることでしょう。
キャストの皆さんの歌唱力はともかく、全体の感想はどうかと言いますと。
…久しぶりに観たので、『李香蘭』の時と同様、復習気分でした。
それなのに特定のキャスト、特定の場面に限っては前回の記憶が色濃く残っているので、違和感を感じる場面もあり。
…まことに厄介な「再会」でした。
その筆頭は観る前の懸念どおり、アルドンサ。
歴代のアルドンサを演られた方は、宝塚で男役で名を馳せた方ばかり。
その事実がこの役の奥深さを物語っていると思う。
松たか子のアルドンサ、見た目はイイ感じだと思いました。
おそらくアルドンサの年齢設定は彼女とそんなに変わらないでしょう。
でもアルドンサは実年齢以上の経験をしているはず。
残念ながら私には、彼女からその「経験」が感じられなかった。
言葉を変えれば、最初からドルシネアだった…とも。
それが彼女の努力不足なのか、それとも歌舞伎で言うところの「ニン」でない役柄なのかは、わからない。
それでも台詞歌詞にこめられた意味は、ストレートに伝わってきた。
ある意味、初めて観た時よりも。
それは自分が歳をとったからこそ、わかった心境かもしれない。
「見果てぬ夢」リプライズでは今回も泣きました。
13年前とは違う理由で泣いているのはわかるけれど、その理由を説明せよと言われたら難しいです。
話と曲はとても好きなんです。
でも…、何か足りないのです。
それでも今シーズンもう一度観たいか?と問われたら、…「Yes!」でしょうか。
本当にリピートするかどうかは、…乞うご期待。
ついでに。
高麗屋相手に、臆せず駄洒落を連発する駒田さんがステキでした。
これはネタばれの類なので、実際に観てご確認くださいませ。
by piramasa
| 2008-04-06 23:08
| 芝居感想